昨今の開業ラッシュによりクリニック間の競争はますます激しくなってきています。そうした中で顧客満足度を高めてゆくには、医療サービスの充実度だけでなく、ホスピタリティの高いクリニック建築のあり方も非常に重要な要素になってきます。
同時に医療空間としての専門的な設計ノウハウに基づくプランニングが必要になってきますので、設計・施工会社の選定は慎重に決めなければなりません。
設計・施工業者の選定にあたっては、大きくわけて2つのパターンがあり、設計から施工までを一括して1社に発注する「一括発注タイプ」と設計と施工をわけて発注する「分離発注タイプ」があります。
「一括発注タイプ」
設計段階から施工・アフターメンテナンスまで1社の窓口で対応してもらえるため、設計と施工との間に生まれるコミュニケーション不足による不具合の発生やアフターメンテナンス時の責任の所在のなすり合いなどが生じるリスクが少ないといえます。
また効率的な打合せが可能なので開業準備期間の短い先生には、時間的なメリットも大きいと思われます。
一方で、工事価格及び施工精度に対して第3者的な査定機能が存在しないので、不当な価格や不良施工にならないように注意しなければなりません。
そのためには業者の選定には数社を競合させること、工事実績や実際に施工したクリニックを見学させてもらうなどの努力は怠ってはいけません。
「分離発注タイプ」
設計事務所が中心となって、中立な立場で先生と施工業者の間に立ち、施工価格や施工精度をチェックするため、よりオープンなシステムでプロジェクトが遂行されます。
また意匠性や独自のこだわりをより重視する場合に適したタイプといえます。
一方で当然、設計監理費が別途発生しますので費用的な負荷が発生することと、設計監理能力が十分でないと、施工業者とのトラブルやアフターメンテナンスに問題が生じることになりますので、「一括発注タイプ」と同様、実績をよく確認のうえ、同じくコンペにより選定されたほうがよいといえるでしょう。
いずれのタイプも基本的にクリニックの実績が豊富で、そして会社の対応が誠実であるか、ということをよく吟味したうえで選定しなければなりません。
価格ばかりを重視して、不十分な設計や工事を行うと最終的には先生や患者さまが損をすることになりますので、全体のバランスをよく考えて発注するようにしましょう。